その5

仁兵が家さもどると、みんなはおかねの家さいってるだから誰もいやしねだよ。
ほんでまたハヤテのよおんなって、おかねの家えさきてみっとよ、今行列が出かけるとこだよ。
「オラは仁兵だぞツ、オラが山さいってる間に、おかねば一体どこさ連れていくだツ」
 みんなはこれにはタマげたよ、なにしろ天狗さんだ。
体中に太い銀色の毛が生えていて、擂粉木みてえな真っ赤い鼻、まるで茶碗ぐれもあるどでかい目ン玉ばぐりんぐりんさして銅鑼がねみてえな声でわめくだから一人なし腰ぬかしてふるえているだよ。
 みんな蛆虫みてにワタワタしてるうちによ、仁兵天狗ふところから真っ赤いウス絹ば出して花嫁の駕籠にふわっとかけただ。天狗はそのまんま、どんどん山のほうさかけていってみえんくなっちまったから、やれやれつうんでカゴば開けてみっと、おかねは消えて白黒の豆が2,3粒落ちていただとよ。コノ豆はつい最近までおかねの生家にあったがよ、ある年天狗のように鼻の長え虫がウンとわいて食われちまったとよ、、、
 しゃべるでねえツ、ハナかんでヘエ寝ろ。
                   語りみちかた爺