その2

そのうち嶮しい岩山で仁兵はとうとうくたぶれて倒れちまっただよ。どんだけたったかよ。パチ、パチと碁うつ音で目が覚めるとナすぐそばの松ノ木がカサみてに張った下の岩で、さっきのカラスと物すげー形相の天狗さんが仁兵の弁当ば碁石にして夢中ンなってるだ。
仁兵は逃げつかと思ったけんど、根っからの碁好きだからよ足は心と逆に天狗さんの方さむくだ。そろりそろり、ばかだな、とうとう天狗さんの傍さいっちまっただ。