芭蕉翁2

思えば東下のころの我が姿余。
自らを鼓舞し、当代の屈指の詩人たらんとせし人生の門出。
卑屈と高邁の精神闘争につかれ日銭を稼ぐに窮窮として。
しかし胸奥でもちつずけたミューズへの強き憧憬は頑迷。
草庵の隙間風、硯の水は凍るよう。
ふっと墨を薄めることにも慣れた侘しさに
ふと孤寒
口ずさむ宗因の旧套