車山の天狗その4

 おかねはヨみんながあきらめちまってからも仁兵ば探し回っていたけんどよ、
なんぼでも、ほんなもんば待っていたっても歳とるばかで能もねえこんだから、
ええからかんじゃ嫁にいけやれ、つて親がうるさく言うもんで仁兵の三年忌ば汐によ、隣村のお大尽とこさ後家になっていくこんになっただ。
 もともと村でも評判の美人だっただから婚礼の日なんつうは、そりゃ、おめエ大変なもんだヨ。
 前の晩から村の衆が集まってきてよ、デカイ焚き火ばいくつもしてよ道端にゃ
高はり提灯がずらずらよ。どの家も縁さきば開けっ放してナ呑み食い放題つうようのお祭り騒ぎだ。

 これが仁兵に見えねえ訳がねえよ。山の上から見っとそれこさ部落中が火事になったじゃねえかと思うぐれ盛んなもんだから仁兵は目ン玉が飛び出きるぐれタマげてこりゃえらいこんになったと思っただよ。
 山さへえって3年もたったなんては夢にもしらんだから、天狗の面に碁石、、
じゃねえ碁豆ば投げつけるてえと風みてえになって部落めがけて駆け下って行っただよ。